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物価は上昇しても「給料」は上がらない、根本的な問題

2021/04/13

物価は上昇しても「給料」は上がらない、根本的な問題

(加谷珪一 経済評論家)



(IT media ビジネスonline )


1.日本ではデフレが続いているとされてきたが、実際はそうではない。

物価の上昇率こそ低く推移してきたが物価そのものは着実に上がっている。

しかも、インフレやデフレというのは、多数の商品価格を平均した消費者物価指数を基準に判断される。

高額商品など不景気で値下がりした商品があると、それに引っ張られて指数も下落しがちだが、生活必需品は価格が上昇しているケースが圧倒的に多い。

つまり多くの人にとって日本社会はデフレでも何でもなく、インフレというのが現実である。

 生活必需品が値上がりしても、給料も上がっていくのなら何とか生活は維持できるが、日本の場合、賃金だけは上がらない。

それどころか賃金下落のダメ押しとも言える制度が4月からスタートしている。

それは企業に対して70歳までの就業機会確保を努力義務とする「改正高齢者雇用安定法」の施行である。

これまで、企業は希望する社員について65歳まで雇用することが義務付けられていたが、4月1日以降は、70歳までの就業機会の確保が努力義務となる。

これは雇用ではなく就業機会の確保なので、再雇用とは限らず、フリーランスとして業務委託契約を結ぶといった形態も可能となる。

加えて、現時点では「努力義務」なので、企業は順守しなければいけないというものではない。



だが大手企業にとって努力義務というのは、限りなく義務化に近いものであり、コストという点からいっても、雇用を延長したことと大きく変わるわけではない。
つい最近まで企業の定年は60歳だったが、それが事実上、70歳まで伸びたようなものである。

 近い将来、70歳までの雇用が完全義務化される可能性はそれなりに高いと考えられるので、今回の法改正によって日本は事実上、生涯労働時代に入ったと考えてよいだろう。


2.社員数が多すぎる最大の理由は雇用制度

 とりあえず70歳まで働けるということは、年金減額が確実な状況において朗報といってよいかもしれない。

だが賃金という面で考えた場合、この制度は、日本のビジネス社会に致命的な影響を与える可能性が高い。

 日本企業はもともと大企業を中心に終身雇用と年功序列の雇用体系となっており、ビジネスの規模に比して社員数が多すぎる。

日本企業の生産性データなどから計算すると、日本企業は米国やドイツなど諸外国と比較して、同じ収益を稼ぐために投入する社員数が1~2割多い。

 これは事業の付加価値が低いというビジネスモデル上の原因もあるが、社員数が多すぎることも大きく影響している。

日本企業には、会社に在籍しているにもかかわらず、事実上、仕事がないという、いわゆる社内失業者が400万人以上もいるとの調査結果があるが、これは全正社員数の1割に達する数字である。

諸外国と比較して、社員数が多すぎるのはウソではない。

諸外国の場合、業務内容をあらかじめ決めた上で採用を行う、いわゆるジョブ型雇用がほとんどなので、同じ仕事をずっと続ける社員が多い。

一方、日本はそうではないことから、新入社員に現場仕事や雑務を割当て、年齢が上がると、多くの人は能力にかかわらず管理職に昇進する仕組みになっている。

 このため、常に新卒社員を採用し続けないと現場の業務が回らない。

  一方で、定年は延長になっているので、中高年社員は管理職として、長期間、会社に雇用され続けることになる。

結果として、日本企業では社員数が膨れあがってしまうのだ。



3.賃金を取るのか、雇用を取るのか

 以前は「60歳定年」という切り札があったが、これが65歳に延長され、今回の改正で事実上、70歳まで延長された。

社員の平均在籍期間が延びれば、当然の結果として総社員数が増えることになる。

一方で、企業が社員に支払う人件費の原資は決まっているので、1人当たりの賃金は下がらざるを得ない。

 つまり日本においては、雇用制度を抜本的に変えて雇用の流動性を高めない限り、今後も継続して賃金が下がる可能性が高いのだ。

若いビジネスパーソンにとっては、逃げ切りにも見える中高年社員に対しては複雑な感情だろうが、とりあえず雇用だけは保障されている点において、若い世代も日本型雇用慣行の恩恵を受けている。

企業によって程度の違いはあるものの、日本全体としては、賃金を取るのか、雇用を取るのかという二択が迫られていると考えてよい。

これは日本特有の現象であり、海外事情とは無関係である。

一方、諸外国は新興国を中心に高い成長が続いており、全世界の物価は今後もさらに高騰することが予想されている。

しかもコロナ後を見据えた先行投資が相次いでおり、食糧品価格や資材価格はすでにコロナ前を大きく上回っている。


4.今後、節約は意味をなさない

 日本で消費される製品の多くは輸入なので、日本国内の状況とは関係なく価格が決まってしまう。

    つまり今春の値上げは前哨戦である可能性が高く、年後半から来年にかけて、さらに生活必需品の価格は上がっていくと考えられる。

そうなると、今後、モノの値段だけが上がり、給料は上がらないという悪夢のような事態になる可能性が十分にある。

これまでの時代は、節約が事態を解決する有力な方法の一つだったが、その概念は崩壊していくだろう。

もはや節約だけでカバーできる状況ではなく、年収の絶対値を増やさなければ、今の生活水準は維持できない。

スキルアップに成功し、年収が上がっている一部のビジネスパーソンを除き、副業への取り組みはもはや必須になったと考えるべきだろう。


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【URL】https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2104/13/news038.html

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