日本の東証上場企業の筆頭株主は日本銀行であり、第二位はCity Bankグループ や JPモルガンなどの外国金融資本
日本の東証上場企業の筆頭株主は日本銀行であり、第二位はCity Bankグループ や JPモルガンなどの外国金融資本
[四季報で見つけたら要注目!日本一長い名前の銀行の正体とは]
1.[「日本の金庫番」たる、資産管理特化型信託銀行]
「日本トラスティ・サービス信託銀行」「日本マスタートラスト信託銀行」「資産管理サービス信託銀行」は、四季報で出会いやすい。
一見して事業内容を理解できそうにない3行の正体は、資産管理業務に特化した信託銀行だ。
より具体的には信託銀行は年金・投資信託などの運用を委託され、ファンドの有価証券の保管・管理業務などを請け負っている。
日本トラスティが管理している信託財産は240兆円で、うち株式保有は54兆円。
日本マスタートラストは190兆円で、うち株式は24兆円。資産管理サービスの信託財産は141兆円だ。
巨額な資産を管理している。いわば日本の金庫番だ。
3行自体の大株主は主にメガバンク系だ。
日本トラスティの場合、三井住友トラストHD <8309> が66.66%、りそな銀 <8308> が33.33%保有している。
日本マスタートラストは、三菱UFJ信託銀行が46.5%、日本生命が33.5%、明治安田生命と農中信託が10%保有している。
資産管理サービスは、みずほFG <8411> が54%、第一生命23%、朝日生命10%、明治安田生命9%、富国生命4%の保有。
グループ内の年金やグループ内の投信の委託を多く受けているはずだ。
試しに、日本で一番時価総額が大きいトヨタ <7203> の大株主(2016年3月末時点)をチェックしてみよう。
筆頭株主は、日本トラスティで約10.74%保有している。保有株数は3億5861万株。時価にして2兆円だ。
続いて第2位の大株主に豊田自動織機が入った後、3位の日本マスタートラストが約4.46%、9位の資産管理サービスは約1.91%保有している。
四季報などを眺めてみるとほとんどの大型株には3行が大株主として入っている。
なぜ3行の名前を大株主に見かけたら要チェックなのだろうか?
3.[3行の後ろに控える大口顧客とは?]
年金や投資信託が、運用や管理を資産管理専門銀行に委託するメリットは、管理コストを下げるというだけでなく、実質的な株の買い手の匿名性を保つという役割も果たしている。
もしGPIFが管理会社を使わずに株を買い、5%ルールなどの大量保有報告書で、同社が買っていることがわかれば、提灯買いがつくことは必死だ。
それこそ市場の公平性を欠く可能性があり、年金資金の運用成績にも悪い影響を与える可能性がある。
資産管理専門銀行はあくまで委託を受けたものなので、そのバックに実質的な株主が存在する。
すでに話が読めた読者も多いと思うが、資産管理専門銀行にとって最大の顧客は、GPIFなど公的資金・準公的資金を運用している通称「クジラ」なのだ。
3行が大株主になっている銘柄は、GPIFや日銀が買い続けている銘柄である可能性が高い。
たしかに、マスタートラストがトヨタを2兆円保有しているが、トヨタを2兆円買える機関投資家はそうはいるものではない。
もちろん公的資金が買うほどの銘柄なので悪い銘柄ではないのだが、株式保有の需給が偏っている可能性があることには注意しておきたい。
4.[年金基金は中長期の息の長い投資をする]
GPIFは日本の公的年金のうち、厚生年金と国民年金の約140兆円を運用する世界一の機関投資家だ。
クジラとは、公的資金のGPIFの他に、準公的資金と言われる約30兆円の3共済年金、約300兆円のゆうちょ銀行とかんぽ生命の日本郵政系の資産、
そしてETFを年間3.3兆円買っている日銀の資産をあわせた総称だ。
GPIFの資産140兆円のうち、株の比率が23%程度で約30兆円。
3共済の株式の比率はGPIFに準じている。郵政系資産は株の比率はまだまだ低く、民営化とともに株式比率を上げてくる可能性がある。
GPIFは長期の分散投資として、株や債券のアセットアロケーションを決めている。
したがって、基本的には株が大きく下げたときに買い、大きく上がった時に売り、リバランスをする投資スタイルだ。
株式市場が大きく下げたときは外国人の大口の売りに対して信託銀行の買い手口が目立つのは、クジラの手口が信託銀行にでるためだ。
逆に今後株価が上げたときには、大口の売りを出してくる可能性が高いと言えるだろう。
5.[日経平均企業の9割の大株主は日銀]
GPIF以上に問題なのは、日銀かもしれない。
リーマンショック後の2010年から日本市場の安定化のために、日本株のETFを買い始めた。
足かけ5年にわたりETFを爆買いしているために、2016年3月までに累計株式保有額は、8.6兆円に達したと推定されている。
国内に上場する日本株ETF全体の55%を、買い占めしている状態だ。
日銀は日々のETF買い入れ結果を発表しており、購入しているETFの所有銘柄の比率から、日銀の実質株主比率を想定することが可能だ。
たとえば、ミツミ電機 <6767> の日銀の推定保有比率は約11%に達していて、すでに実質筆頭株主になっているようだ。
ほかにも、テルモ <4543> 、ヤマハ <7272> 、大和ハウス <1925> 、住友不 <8830> 、三菱マテリアル <5711> でも上、位3位内に入る保有率であるようだ。
日経平均の寄与率が最も大きいファーストリテイリング <9983> も、日銀が約9%保有している。
6.[クジラの大量保有も、いつかは売り圧力となる]
年金資金はあくまで長期運用だ。
ただ手口があまりに株主構成が偏ると、浮動株が減って需給がタイトになり、上がりやすくなってしまうこともありえる。
また公的資金といえども、いつかは株を売らねばならない。
GPIFはその運用スタイルから、日本株が上がり始めれば、今度は売り方に回ることは明らかだ。
中央銀行である日銀も、いつかは日本株を売らなければならない局面もあるだろう。
資産管理専門銀行が大株主に入っている株を買うときは、こうした需給関係を考えて買う必要がある。
面白い見方としては、新興市場など中小型株で資産管理専門銀行の名義がある時だ。
基本的に公的資金は資金が大きいため、パッシブ運用に近い形をとっている。
ただ一部を、アクティブファンドの中小型株でも運用している。
小型株に資産管理専門銀行の名義があった場合、公的資金・準公的資金のファンドがアクティブ運用の銘柄として、組み込んでいる可能性があるかもしれない。
たとえば、マザーズのサイバーダイン <7999> は、マザーズ銘柄でありながら、時価総額が約2874億円もある銘柄だ。
決して、日銀が買うETFに組み込まれた銘柄ではない。しかし、2016年3月末時点で日本トラスティが4.24%で第3位の大株主だ。
もちろん実質株主は不明だが、大手年金か大手投信の可能性が強いだろう。
海外の運用管理を行う銀行の会社を「カストディアン銀行」という。
大企業の大株主として、海外のカストディアン銀行も頻発する。
クジラの影と合わせて、こちらも注意してみると面白いだろう。
(ZUU online編集部)
電通関連の主な出来事
1. 電通がなぜか韓国のキムヨナを支援した。
IBスポーツ(キム・ヨナの前所属事務所)のマネージメント支援。
2007年、 当時スポーツ選手のマネージメント経験が浅かったIBスポーツに対してグランプリシリーズ韓国開催、中継権事業協力など破格の条件を提示してマネージメントを支援。
東京五輪・パラ大会開会直前、JOCの経理部長が地下鉄中延駅で電車に飛び込み逝去した。
折しも、同大会のオリ・パラ開閉4式典では大会組織委員会から電通に最終的に165億円が委託されたが、実際にオリ・パラ4式典に用いられた予算がおよそ10億円。
155億円あまりが電通の守秘義務契約を理由に使途不明になっていることが明らかになっている。
3. 新型コロナで電通関連会社、子会社に再委託、再々委託した。
2019年新型コロナウイルス感染症の流行に伴う経済産業省外局中小企業庁による持続化給付金事業を、サービスデザイン推進協議会が769億円で受託し電通に749億円で再委託していた。
さらに電通から電通ライブ、電通テック、電通国際情報サービス、電通デジタル、電通東日本などに再々委託し、電通ライブからはパソナ、大日本印刷、トランスコスモス、テー・オー・ダブリュー(TOW)などに再々々委託していた。

「利権マスコミの真実」 田原総一郎『電通』(朝日文庫)
日本の総広告料の約25%を電通が握っており、2位の博報堂を売上高で2.75倍も引き離しています。ただ電通の広告の取扱高が「世界一」というのには事情があります。例えばアメリカでは業種が同じ場合、複数の企業の広告を一つの代理店が扱うということはありません。ところが日本ではトヨタもホンダも日産も全部、電通が取り扱うのです。仕事量が膨大なものになるのは当たり前です。
電通という会社の歩みは日本の近代史と密接に関わっています。
創業は明治34年(1901年)です。創業者は光永星郎、会社名は「日本広告株式会社」、今の銀座4丁目に小さな二階家を借りて家賃25円を払ってのスタートでした。当時は広告という言葉を知っている人もあまりいませんでした。たとえ知っていても広告主=企業と広告を載せる媒体=新聞社との間に広告代理業者がいる、ということを知っている人はほとんどいなかったでしょう。その、まったく未開拓の市場に光永星郎は乗りだしました。
しかし、光永がやりたかったのは実は通信社の創設でした。日清戦争が勃発すると光永は従軍記者として中国各地を回りました。その時、日本には本格的な通信社がなかったので外国の特派員が書いた間違った記事をそのまま新聞が載せたり、光永が書いた記事を新聞が載せるまでにあまりに時間がかかったりという、苦い経験をしました。そこできちんとした通信社を創ることを思い立ったのです。
しかし通信社の運営には莫大な資金がいります。当時は新聞社の財政基盤が弱く、通信社からニュースを買うのにわざわざお金を出す、という発想もありませんでした。そこで苦肉の策として通信業と広告代理業を両方やる会社を興すことにしました。つまり新聞社にニュースを提供して通信料をもらう代わりに広告を載せてもらって新聞社に広告料を支払う、というシステムです。
明治39年(1906年)、日露戦争によって景気が良くなった時期を見はからって光永は「日本広告株式会社」と「電報通信社」を合併して「日本電報通信社」を設立しました。
これまで電通が関わったイベントの代表的なものとしては1964年の東京オリンピック、1970年の大阪・万国博覧会、1975年の沖縄海洋博覧会、1979年の東京国際女子マラソン、1988年のソウルオリンピックなどがあります。
ソウルオリンピックでは初めて「TOP(The Olympic Partner)」制度が導入されました。オリンピックを支えるにふさわしい最高のスポンサー、という意味で、日本からは松下電器とブラザー工業が選ばれました。このTOPとIOC(国際オリンピック委員会)をつなぐエージェント業務を行なっていたのがスイスに本社があるISLという会社ですが、ここは実はスポーツシューズ・メーカーのアディダス社と電通の共同出資会社です。
昭和20年(1945年)、ジャーナリスト、上田碩三が電通の第3代社長になりますがGHQによって公職追放の憂き目に遭います。上田のあとを受けて社長になったのが吉田秀雄でした。この吉田秀雄こそが戦後の電通の基礎を築き、電通を世界一の広告代理店にした人物でした。
吉田は戦後、職を失った軍人や軍属、なかでも満州国の経営に携わっていた人材を次々と採用しました。広告と何の関係もない仕事をしていた満鉄関係者や公職追放となった政治家、財界人、新聞人などを社に迎え入れました。科学的なデータに基づいて当時としてはもっとも近代的な経営戦略を知っていたのが満鉄のスタッフでした。吉田は敗戦によって職にあぶれた優秀な人材を入社させることによって、電通の経営の近代化を図ろうとしたのです。
電通が躍進した第一の原因が民間ラジオ放送、第二が民間テレビ放送でした。当時、広告料を取ってラジオ局を運営するという発想自体がまだなく、ノウハウもありませんでした。吉田は満鉄関係者の人脈でGHQの協力を取りつけ、6年かかって民放ラジオ開局の認可を得ました。昭和26年4月21日、ラジオ東京、文化放送など16社に予備免許が与えられました。新設されたラジオ局には電通から人材が送りこまれました。
1959年の皇太子殿下(今上天皇)のご成婚と東京オリンピックをきっかけにしてテレビは一挙に家庭に普及しました。テレビ受像機の数は約450万台、テレビの広告費がラジオを抜いて238億円となり、75年にはついに新聞を抜いて4208億円となりました。1955年、吉田は社名を「株式会社日本電報通信社」→「株式会社電通」と改めました。
まずメディアにとって命である広告主の問題です。例えば東京のテレビ局(キーステーション)の夜7時から11時までのゴールデンタイムのCMの約90%を電通が握っている、と言われています。CMだけでなく、番組の内容にまで電通は影響を及ぼすことができます。公正取引委員会は「広告業界が、電通を頂点とするガリバー型寡占構造となっている」と指摘しています。
二つ目は電通が全国の主要な新聞社やテレビ局の株主である、という驚くべき事実です。マスコミ以外にも銀行、証券会社など、日本を代表する大企業の株を電通は握っています。電通がマスコミを支配できるのはマスコミと資本関係で緊密に結びついているからです。
三つ目は人脈です。電通はマスコミ、特にテレビ局の中枢に出向という形で社員を送りこんでいます。「ビデオ・リサーチ」という、視聴率を調査する会社があります。すべてのテレビ局の命運は視聴率に左右される訳ですが、この「ビデオ・リサーチ」は実は電通の傍系会社なのです。
マスコミに社員を送りこむ一方で電通はマスコミの社長、重役クラスの子弟や各界の著名人の子弟をコネで入社させています。「電通」が「コネ通」と呼ばれる理由はここにあります。雑誌「財界展望」1985年7月号に「子息が電通マンになっている各界著名人一覧表」が載っています(遠藤隆司「徹底調査―電通の人事・人脈騒乱」)。「81年調べ」とあるのでデータとしては古いですが、電通のコネ入社の実態がよく分かります。新聞界では5大紙と共同通信、地方紙、テレビ界ではNHKはもちろんのこと、各地方のテレビ局の幹部と電通はつながっています。その他政治家、大学教授、スポーツ選手、俳優、作家・・・・著名人の名前がずらりと並んでいます。「各界」という言葉が決して大げさではないことが分かります。電通はこのような手法で日本のさまざまな勢力と地下水脈でつながっているのです。
吉田秀雄はこれをきっかけにして急速に政治に傾斜していきます。首相が池田隼人に代わっても吉田は首相官邸に出入りし、首相に政府広報やPR活動の必要性を説いたりしていました。1961年、吉田は台湾、フィリピン、香港、韓国を結ぶ「電通インターナショナル構想」を具体化しようとしています。それは広告というものを単なる商品の宣伝に留まらせるのではなく思想的商品にまで高め、ソ連、中国といった社会主義勢力の浸食を食い止めようという、愛国心からの行動でした。しかし1963年、吉田は59歳でガンで死亡しました。
日本の政治家の中で誰よりも早く、テレビの影響力を見抜いていたのは田中角栄でした。「小学校卒の宰相」「今太閤」というお茶の間受けする、庶民的なキャラクターはテレビ時代にぴったりでした。
1972年7月、首相になった田中角栄は情報体制の拡充に力を注ぎ、政府の広報予算を大幅に引き上げました。そして73年5月、首相直轄の内閣広報室を設置しました。この動きの陰に電通がいたことは間違いなく、電通も72年11月に政府・官公庁を担当する「第9連絡室」を新設しています。電通が「築地CIA」とか「影の情報省」と呼ばれるのは、日本の情報戦略を操っているのは電通だ、つまり日本を動かしているのは電通だ、という意味です。
成田豊は「韓流ブームの仕掛け人」と言われますが、それは彼自身が日本統治時代のソウル生まれで、韓国とは縁が深かったことによるものと思われます。昭和28年に電通に入社、33歳で早くも新聞の地方紙を扱う地方部長になっています。1988年のソウルオリンピックでは協賛広告を出す企業集めに奔走しました。
電通マンにとって人脈は命、と言われますが成田豊も幅広い人脈を持っていました。「劇団四季」の浅利慶太との親交は有名で、四季の韓国進出にも当然、成田が深く関わっていたでしょう。現在「劇団四季」には100名を超える韓国人劇団員がいるそうです。成田の裏の交友関係の代表格が大手消費者金融(サラ金)「武富士」の故・武井保雄会長です。消費者金融もパチンコも、経営者の多くが在日韓国人・朝鮮人です。以前は深夜にしか流せなかった賤業であるサラ金やパチンコのCMがプライムタイムに堂々と流れるようになったのも成田が社長になってからのことです。
社長時代の成田の最大の「功績」は何といっても2002年のサッカー・ワールドカップ日韓共同開催の実現でしょう。本来、日本が主催するはずの大会がなぜか韓国と共催になり、マスコミもこれをきっかけに意味もなく韓国を持ちあげる傾向が強くなりました。韓国ドラマ「冬のソナタ」がNHKで放映されたのは2003年です。ワールドカップ開催を見届けるかのように成田は社長職を譲って会長に就任していますが、事実上は成田の院政だった、というのが実態でしょう。2008年、成田は「30年にわたる韓日文化交流事業を積極的に後援した功労」によって韓国政府から修交勲章光化章を授与されています。
電通は韓国の国家戦略に加担しています。2008年に通貨危機直前という状況に陥った韓国は2009年、「国家ブランド委員会」を立ち上げました。韓国の映画やテレビドラマ、歌などが品質という点では日本製とまともに戦ったら勝てないことは韓国政府も分かっているので、メディアを利用して売る戦略に打って出たのです。
例えばK-POPの場合、韓国内でCDを出してもほとんど売れません。韓国では著作権を守る態勢ができておらずダウンロードが簡単にできるからです。そこで日本で稼ごうと歌手が来日するわけですが、その時にメディアが空港に「サクラ」を動員して、あたかもその歌手が人気があるかのように見せかけます。メディアに頻繁に露出するもの=品質の良いもの、売れているものという情報操作ですが、予想以上に多くの日本人が騙されてしまいました。
テレビ局が韓流ドラマを異常に多く流すのは電通の指示もあるかも知れませんが、コンテンツとして安いという側面もあります。日本人の脚本家が脚本を書き、日本人の俳優が演じるよりも安上がりだという単なるビジネスの発想です。ただドラマだけでなく番組の中でも韓国を不自然に持ち上げるなど、あまりに韓国に媚びる姿勢が目立ちます。テレビ局のプロヂューサーなどに国家観、歴史観がないことも一因です。
今は武力ではなく情報で戦争する時代です。ですから中国や韓国がメディアを利用しようとするのは国家戦略としては当然のことです。問題は日本政府に戦略がなく、国民も戦後教育の悪しき影響で国家観や外国文化の侵略に対する警戒心のない人が多く、そこに韓流ブームがうまく乗ったのだと思います。
この制度を確立したのは田中角栄首相でした。昭和39年、科学技術専門チャンネルとして開局しながら赤字続きだった東京12チャンネルを日本経済新聞に身受けさせたのは田中首相でした。「クロスオーナー・シップ」によって田中首相=自民党はテレビ局を通して新聞社にもにらみを利かせることができるようになりました。田中首相が失脚するきっかけになった「ロッキード事件」を最初に記事にしたのは雑誌「文芸春秋」でした(筆者は立花隆)。田中首相の金権政治を新聞もテレビも知っていながら記事にできなかったのです。
新聞社は「新聞特殊規定」という特権に守られています。これは「価格競争をしなくてもよい」ではなく「価格競争をしてはならない」という異常な規定で、独占禁止法からなぜか新聞だけが例外扱いを受けています。民放テレビ局は「放送免許」に守られています。「放送免許」は一度取得したら、事実上剥奪されることはありません。テレビ局を監督しているのは総務省のはずですが、実際にはチェック機能を果たしていません。
さらに強固に守られているのがNHKです。NHKは総務省の管轄下にある特殊法人ですが総務省の言うことは一切聞きません。NHKをコントロールできるのは唯一、国会の総務委員会ですが既にNHKと癒着しています。新たに総務委員になった国会議員がNHKの体質を改めようとするとNHKはその議員の不祥事を見つけて報道で攻撃します。驚くべき腐敗ぶりです。これが日本の公共放送の実態です。長年、特権に甘やかされ、利権でがんじがらめになったメディアを正すのは容易なことではありませんが、政治家や官僚がそれを出来ないなら私たち国民が声を上げてゆくしかありません。
参考文献:但馬オサム「電通―日本を影で操る情報工作機関はいかに巨大化したか」(「利権マスコミの真実」2011年12月29日)
田原総一郎『電通』(朝日文庫)
ブラックロックCEO、侵攻で「グローバル化に終止符」--公益資本主義(ステイクホールダーの為の資本主義)へと転換
2022/05/01
ブラックロックCEO、侵攻で「グローバル化に終止符」
--公益資本主義(ステイクホールダーの為の資本主義)へと世界の資本主義が転換すると意見表明
(ブラックロックは10兆米ドルを超える資産を運用): 日本経済新聞 2022年3月25日
(三橋貴明 :「新」経世済民新聞TVより取得)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN24DXF0U2A320C2000000
【ニューヨーク=伴百江】
世界最大の資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は24日、株主に宛てた手紙で、ロシアのウクライナ侵攻が「グローバリゼーションに終止符を打った」と記した。
各国がエネルギーの脱ロシア依存を模索するなかで、温暖化ガス削減に向けた取り組みは短期的に軌道修正を余儀なくされると指摘した。
フィンク氏は「(各国は)ロシアとの経済戦争に突入した」と強調。
米欧による制裁や民間企業の事業撤退などで「ロシアは国際資本市場から遮断された」と述べた。
同社は34年前に創業し、米ソ冷戦終結による「平和の配当」やグローバリゼーションの追い風を受けてきたが、これまでの前提が変わったとの認識を示した。
10兆ドル(約1220兆円)超の資産を運用するブラックロックは、すでにロシア関連の金融資産への投資を停止した。
関連債券や株式を組み入れたファンドで総額約170億ドルの評価損を計上している。
フィンク氏は「過去数週間にわたり、顧客や当社の社員に向けて、ロシア向けの投資をどう避けるか説明してきた」と表明。
「新しい投資環境をうまく切り抜けるために、この危機の直接・間接的な影響を注視していく」と説明した。
各国政府や企業がロシア依存を見直すなかで恩恵を受けるのは「メキシコやブラジル、米国、東南アジアの製造拠点だろう」との見方を示した。
同社が事業を強化している中国など打撃を受ける可能性のある国については言及を避けた。
各国がロシアの原油・天然ガスに代わるエネルギー源を模索している。
フィンク氏は「長期的には今回の危機が再生可能エネルギーへのシフトを加速する」とする一方、温暖化ガス排出量の実質ゼロ(ネットゼロ)への転換は一時的な停滞が避けられないと指摘。
機関投資家としてESG(環境・社会・企業統治)の改善に向けた取り組みが難航する可能性を示唆した。
ロシアの侵攻やその後の経済制裁を踏まえ「各国で(従来の)通貨に依存することを再考する動きが加速するだろう」と予想し、デジタル通貨の役割が拡大する可能性に言及した。 米連邦準備理事会(FRB)によるデジタルドルの取り組みにも触れ、「グローバルなデジタル決済システムはマネーロンダリングや汚職のリスクを軽減しながら、国際的な取引の決済を強化できる」と述べた。
フィンク氏が暗号資産(仮想通貨)について公式に言及したのは初めてで、ブラックロックが仮想通貨や法定通貨を裏付けとする「ステーブルコイン」、関連技術の研究に取り組んでいると語った。
【URL】https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN24DXF0U2A320C2000000
人事部が考えたリストラのすすめ方とノウハウ。一般的なリストラの手法 (ねほりんぱほりん)
2022/03/04
人事部が考えたリストラのすすめ方とノウハウ。一般的なリストラの手法
(ねほりんぱほりん NHK TV 2022.02.25 )
0.2月25日放送『ねほりんぱほりん』
(NHK Eテレ)のテーマは、リストラされた人……ではなく、リストラを告げる「リストラの担当者」であった。
そもそも、リストラとは「リストラクチャリング」の略語で、会社の事業を再構築することを指す言葉だそう。
リストラの正式名称なんて初めて知ったし、今ではもはや人員削減的な意味が定着してしまっている。でも、本来は強制的に辞めさせることではないのだ。事実、解雇は日本の法律で厳しく制限されている。そのため、ほとんどの場合は“社員のほうから退職する”という形(建前)へ持っていこうとするらしい。
1リストラの対象は誰でもいい
今回のゲストは、会社の不採算部門の人事を担当したソウタさん(30代)と、業績悪化で閉鎖する工場のリストラを担当したイチローさん(30代)の2人であった。
まず気になるのは、リストラされる社員の人選。
会社の上層部がすでに決めているのだろうか?
ソウタ 「お上の人からは『いくら減らせ』と」
YOU 「『20人減らせ~!』って言われて……」
ソウタ 「いや、お金のほうです、お金」
山里 「『いくら分の人間は減らせ』って。怖い指示!」
YOU 「そっか。お給料、みんな違うし」
コストのほうの数字で指示がくるらしい。
そして、そこからの人選は人事部に丸投げされる。
つまり、すべての社員が対象者ということ。
極論、誰でもいいのだ。上層部にとって、日頃の仕事ぶりや将来性は二の次。
それどころか、役員1人辞めたほうが浮く人件費は大きくなる。
では、人事部はどういう社員をリストラ候補にするのか?
当然のことながら名前が挙がるのは、業績が悪かったり勤務態度が悪い社員だ。
それでもあまり差が出なかった場合、重視されるのは3つのポイントである。
・家族がいる
・勤続年数が長い
・役職に就いている
「この人たちを切ります。この人たちはストーリーを作りやすいんですね」(ソウタさん)
イメージとしては逆だ。上記3つは残すべき人たちの条件みたいに思える。
家族がいたら切られやすいなんて……。
でも、理由がある。家族がいるとローンがあるので減給は困る。
だから、「他社で再就職するよ」というストーリーを作りやすいのだ。
勤続年数が長い人はプライドが高く、降格や異動に対して「イヤだ」と難色を示すため、リストラする側としては思う壺。
役職に就いている人は、「業績悪化の責任を負う」というストーリーが作りやすい。
だから、上記の3つのポイントは重視されるのだ。
ということは、独身の平社員はリストラに遭いにくいのか?
まあ、平社員を切っても人件費削減という観点では効率が悪いものな……。
2リストラの“理由”は本人から話させる
続いて公開されたのは、リストラの告げ方だ。
勤務中に対象社員の背中、肩甲骨辺りを“トントン”と叩き、「仕事中、お忙しいところすみません」と穏やかにニコニコと話しかけ、そのまま別室へ連れていき、テーブルを挟んで向かい合う。
そして、「なんで呼ばれたかわかりますか?」と問う。
そこからは沈黙。人事部側からは何も言葉を発さないのだ。沈黙の目的は、自分から落ち度を話させるためである。
山里 「『今、ちょっと業績悪い件についてですか?』みたいなことを、向こうから出させる?」
ソウタ 「はい。沈黙はやっぱり耐えられないみたいで、5分とか10分したら勝手にペラペラしゃべり出しますね」
そもそも仕事中に人事部が来たら怖いし、声の掛け方は文字通りの肩叩き。
呼んでおいて何も言わないのは恐怖でしかない。
さながら、“リストラ仕事人”といったところか。
そして、対象者に心当たりを話させるという狡猾なやり口である。
はっきりと気持ち悪い。リストラのときにまで忖度を迫るのは、いかにも日本の企業。陰湿だ。
「で、『うちの営業所、業績悪いですよね』なんて言い出したところで、『じゃあ、そのことについてあなた、リーダーとしてどう思います?』
『何か改善されましたか?』と」(ソウタさん)
業績悪化の多くは経営の問題である。
なのに、一個人に重大な責任があったと思わせ、自ら辞職を切り出させようとする胸クソ悪さはどうか。
決して、会社側から促すという構図を作らないやり口は、裏社会のそれに近い。
とは言え、頑なに拒否する社員だっているだろう。
その場合は、次なる手を打つ。
「こっちの『辞めさせる』ってことは変えずに、手段としてはタイムセールじゃないですけど『今辞めたら退職金をこれだけ上乗せできる』と言うと、みんなこの後の生活が頭をよぎるんですね。
で、『今しか!』ってこちらから言うと、『サインしたほうがいいんじゃないかな?』って方向にほとんどは傾いていきます」(ソウタさん)
こんな「今でしょ!」はいやだ。
リストラ交渉の担当者が自殺する
もともとは東京勤務だったイチローさんは、ある地方の工場が閉鎖するにあたってリストラを担当した。
その工場があったのは、彼の地元だそうだ。
「あえてというか。そのほうが共感しやすい、仕掛けやすいということで人事としてはままあります」(イチローさん)
対象は、工場で勤務する約200名の従業員全員。
そのリストラ担当者としてあえて地元出身者を行かせるという非情さに、またしても人事部の怖さを感じた。
形としては、作業員全員に工場閉鎖を告げて一斉にリストラを目指す。
しかし、その1年前の時点でイチローさんは工場に着任した。
リストラを告げる準備に1年かけるということだ。
「青天の霹靂になると精神的負担がとても大きいので、『なんでこうなった!』ということに突然ならないように、管理職が集まる日頃の会議の場で『景気が悪い』『工場の採算が取れてない』などと伝えたり、工場の中の方々にも『自分たちで考えていかないと、このままだと工場がまずい』と伝えていく」(イチローさん)
危機感を与えている時点で、工場の閉鎖はもう決まっているのだ。
空気を作っていくためだけの煽りである。
そもそも、工場内だけで頑張っていても採算なんかよくならない。
だから不毛、ただの根回しだ。1年後に閉鎖が決まっているのなら先にはっきり伝え、就活しながら勤めてもらうほうがよいのでは?
と思わないでもないが……。
そして、イチローさんが着任してから1年が経った。
工場閉鎖によるリストラを告げるため、全従業員がホールに集められたのだ。
閉鎖と全従業員解雇をみんなに伝えたのは、工場長である。
実は、彼が工場閉鎖の事実を知ったのはイチローさん着任と同時期の1年前。
もちろん、リストラ対象者には工場長本人も含まれている。
YOU 「工場長の身は持つ、1年も!?」
イチロー 「持た……せてもらいました」
自分もリストラされるというのに、よく勤め上げられたものだ。
閉鎖とリストラが発表された瞬間、ホール内は怒号が飛ぶこともなく、落胆の空気が充満していたそうだ。
全員、閉鎖をなんとなく察していたのだろう。
1年かけた準備の成果である。
「私の仕事は、リストラを告げるときのシナリオを作ること」(イチローさん)
シナリオを作る、つまりイチローさんは黒幕の役目を担当した。
そこからは、工場の各部署の部長が個別の面談を行っていく。
でも、面談で揉めることはなかったのか?
「大きな揉め事はなかったんですけれど、シナリオに沿ってリストラを告げていただく部長の内の一人が自殺を……してしまいました。
詳しい理由は私にもわかりませんが、面談の期間中だったので、気を病んでしまったのか……」(イチローさん)
自殺は会社に対する、もっと言えばイチローさんに対する部長からの訴えである。
「なんで気付かなかったのかと、人事と言っていながら人のことが自分も全然わかっていないなと、痛感しました」(イチローさん)
イチローさんのしゃべり方が暗い。
感情を抑えつつ、苦悩がありありと伝わってくる。
リストラは“される側”も、“切る側”も、そして“切らさせる側”も苦しすぎる。
「1年かけて準備する方法は間違いだったのでは?」という気が、やっぱりするのだ。
3退職へ追い込もうと、人間を壊す方向に誘導する
退職合意書にサインしない社員が出てきた場合。
そういうケースでもやり方はあるらしい。ソウタさんが明かした。
「『残るんだったらば、頑張れるよね? じゃあ、営業目標を一緒に考えようか』って話すんですよ」(ソウタさん)
そこで本人が「前年の105%を売り上げます」と言ったら、「105%で今の経営状況って打開できるかなあ?」と返す。
すると、勝手に本人が目標を釣り上げていくらしい。110%、120%、130%……もはや、実現不可能な数字に達している。
でも、あくまで自ら提示した目標だ。
自分から言わせるやり口は、やはり反社のそれに近い。
「できるわけないですよ。でも、本人は自分が退職勧奨受けてるんで、頑張るんです。
休日返上で頑張ったり、夜遅くまで頑張ったり、これをずっと続けてくんですよね。
3カ月ぐらいそんな状態を経過観察し、その頃には顔色真っ青で話もろくすっぽ聞こえてないですし、もうズタボロですよ」(ソウタさん)
そのタイミングで「大丈夫か。診てもらったほうがいいんじゃないのか?」と促し、病院で抑うつ状態と診断が出たら本人と相談して休職に。
そして休職期間が満了すると、雇用は終了である。
人を壊す方向へ誘導する荒さは、鬼だ。
彼の狡猾さは悪魔のそれである。会社都合の退職で処理するのではなく、退職の方向に仕向けるだけ。
そこは、あくまでブレない。えげつなさすぎて言葉を失った。
仕事上の業務とはいえ、リストラ担当者が行っているのは殺人だ。
尊厳的な死でもあり、工場で起こったように現実的な殺人でもある。
ソウタさんの追い込んでいくやり方を聞くと、そう言わざるを得ない。
彼がリストラのために行った方法に、法律的な問題はないのか?
番組は多くの雇用・労働問題に関わる鮫島千尋弁護士に話を聞きに行った。
「この事案ですと、いろいろな部分で違法な部分があると思いますね」(鮫島弁護士)
特に大きいのは、以下の2点だ。
・なんとか自発的に辞めてもらうため、嫌がらせをしている状態。これで労働者は損害を被ったのだから、民法709条(不法行為による損害賠償)の損害賠償責任問題が出てくる。
・売上目標が達成不可能な数字で、会社はそれをわかっているのに本人がうつになるまで仕事をさせ、追い詰めた。労働者の精神面を管理する安全配慮義務に違反している。
当然である。法律的に明らかにアウトだ。
「人としてやっちゃダメだろう」と憤っていたから、違法と言い切ってくれて救われた。
ソウタさんが行っていたのは違法リストラである。
ということは、訴えれば勝てる目があるということ?
でも、この状態まで追い込まれたら本人は正常な判断力を失っているだろうし、退職して逆に解放感を覚えていたかもしれない。
何にせよ、人間のやる所業ではない。
鮫島弁護士の解説を聞き、ソウタさんはどう思ったのか?
「思い返せば『ちょっとおかしいな』と思ってたんですけど、もともとは私、専門知識があって人事部に行ったわけではないんですよね。
本当に一番怖かったのは、やらなきゃ自分が切られるので、そのプレッシャーで必死にやってくしかなかったかなって」(ソウタさん)
自分が切られないために、誰かを切るという地獄。
赤軍で起こった内ゲバの構造に酷似している。
「ただ、だんだん『ちょっとおかしいな』と思ったりとか、自分の中で転機になったリストラがあって」(ソウタさん)
あるとき、ソウタさんがリストラを告げた対象者は50代の男性だった。
すると、彼は机に額が当たるほど頭を下げ、「息子が今年から大学行くんで、お金が必要なんです。
もう一回チャンスください」と泣きながら訴えたという。
「大体、私の父親と同じくらいのお年だったんですけどね。
『この人が自分の親父だったらなあ』とか、初めて相手に感情が入ったかなって。
『お子さん、どうなのかな』とか『この人、奥さんに何て説明するんだろう』とか。
人の人生メチャメチャ狂わせてるんじゃないかなあって本当に思って、吐き気がそこから止まらなくなりました」(ソウタさん)
反省の弁を述べているように見えるが、この時点まで相手に感情が入らなかったとは本当に狂っている。
会社の価値観に洗脳されていたのか? 50代での再就職は、おそらくかなり難しいだろう。
切って、もうそれで終わりだというのか? 再就職の支援は?
ソウタさんは罪悪感を覚えたようだが、罪悪感を薄める方法は他にまだある気がする。
4.リストラを“する側”が“される側”に回る因果
ソウタさんは、リストラしたある40代の男性からストーカー行為を受けたという。
会社帰りに待ち伏せされては「よっ、今日もクビ切ったの?」と声をかけられ、同じ電車に乗り込まれては「彼女いるの?」「普段、何してんの?」「趣味は?」と質問攻めにされた。
「とにかく自宅だけはわかられないように遠回りして、逃げることに必死でした」(ソウタさん)
この付きまといは約1カ月で終了した。しかしある日、家のポストを開けると三つ折りにされたA4サイズの紙が入っていた。
中を見ると、そこにはソウタさんの本名だけが書かれていた。家が特定されたのだ。
「刺されるなと思って、すぐに引っ越しました」(ソウタさん)
リストラは“される側”だけでなく“する側”の人生も狂わせる。
「リストラ担当」は、いわば「恨まれ担当」でもある。
もちろん、会社は守ってくれない。つまり、ソウタさんたちは使い捨てだ。
リストラは人事部だけの権限で行えるものではなく、そういう意味で担当者も被害者である。
それどころか、「リストラ担当になった彼ら自身、実はリストラ対象者だったのでは?」なんてことまでよぎった。
その後、会社の人事方針に疑問を持つようになったソウタさんは「労務に関する知識を身に着けたい」と働きながら社会保険労務士を目指し、1年後に見事資格を取得。
務めていた会社を退職し、社会保険労務士に転職した。
それからは、某企業の就労規則や人事制度を変える仕事をしていたが……。
「今度は、自分がリストラされました(苦笑)」(ソウタさん)
大型の台風が直撃した際、会社から社員に「家で待機してください」等の連絡が一切なかった事実にソウタさんは激昂。
管理部門に詰め寄ると、翌日から「今のプロジェクトから君は外す」と窓際に追いやられ、社労士の仕事ではなく営業の業務を振られるように。
そして、半年後にはリストラ面談が設けられた。
「これはまさに、自分がやってきたことと同じ手口だなと」(ソウタさん)
因果法則、すべて自分に返ってきたのだ。
「もうここには残れない」と察したソウタさんは、リストラを受け入れた。
リストラを“する側”“される側”の両方を体験しているソウタさん。
人事部→社労士→リストラと、彼の道程はある意味劇的である。
そして現在、ソウタさんは別の企業の人事部に勤務しているそうだ。
また、人事かよ!? ここまでくると、ドラマでありカルマだ。
一方、イチローさんは当時背負っていた「リストラ担当」のポストから解放されようと会社を退職、現在は別の会社で人事をしている。
彼もまた、人事部なのか……。
両者ともに、いい思い出がない人事部へ再び行ってしまうのが不思議だ。
前職が人事部だから、再就職先でも人事へ行く可能性が高くなってしまうのだろう。
当然、「人事としてリストラを担当した」という経歴に需要もあったはずである。
今回の『ねほぱほ』は、今までで1、2を争うほどの怖さがあった。
リストラ担当のつらさを伝える内容でもあったが、強く印象に残ったのは非人道的なリストラのノウハウである。
そもそも、雇った社員を辞めさせないとダメな経営はしないでほしい。
リストラしなければならないほどの経営悪化は、上層部の失敗が発端のはずだ。
だから、経営陣から責任を取るのが筋。
こんな酷いリストラ勧告をさせないために、組合組織の強化が必要とも感じた。
そして、胸が痛かった。
「弱者男性(KKO:きもい金ないオッサン)の安楽死を合法化せよ」
2022/02/10
「弱者男性(KKO:きもい金ないオッサン)の安楽死を合法化せよ」
1.「努力は遺伝に勝てない」と言われることがある。
それは本当なのか。作家の佐藤優さんは「身の回りに優生思想はさまざまな形で顔を出している。
この発想は人々が物事を諦める理由にもなっているのではないか」という。
精神科医の斎藤環さんとの対談をお届けしよう――。
■「努力は遺伝に勝てない」身の回りに優生思想は存在する
【斎藤】私は優生思想については、ある意味古典的な、優秀な遺伝子の継承を目的とした人工的な淘汰(とうた)を肯定するという考え方にとどまらず、人間の「生」に対して、「良い生」や「悪い生」があるといった価値判断を下す思想全般が含まれる、と考えているんですよ。
「マイルドな優生思想」と言えばいいでしょうか。
【佐藤】全く同感です。その視点に立って眺めてみると、なにも、「意思疎通のとれない障害者は安楽死させるべきだ」「重度・重複障害者を養うには莫大(ばくだい)なお金と時間が奪われる」などの言説をした2016年に起きた相模原障害者施設殺傷事件の植松死刑囚の世界まで行かずとも、身の回りに優生思想が様々な形で顔を出しているのが見えてきます。
私は、「努力は遺伝に勝てない」「『悪い生』に生まれたら、そこから抜け出せない」といった優生主義の発想は、人々が様々なことを諦める理由にもなっているのではないか、と感じるのです。
「教育は子どもの成長に関係ない」と言われれば、塾に行かせる経済的余裕のない親は、「そうだよね」と自らを納得させることができるでしょう。
経済格差が広がる社会においては、「人生は生まれながらに決まっている」というこの手の議論は、受け入れられやすいのかもしれません。
為政者にとって都合がいい、と言うこともできるのですが。
■格差社会の底に沈んでいる「弱者男性」
【斎藤】経済格差に関連して言うと、最近流行っている言葉に「弱者男性」というのがあります。
ひと頃、「キモくて金のないおっさん」の略称として「KKO」と称するネットスラングがあったのですが、さすがに差別的だということもあって、今はこう呼ばれます。
要するに、職も不安定なまま、気づくと中高年になっていた人たち。
見た目もイマイチ、貧困で結婚もできず。従って、幸福度は低い。
独居男性は、結婚している人に比べて、10年以上早死にするというデータもあります。
【佐藤】まさに格差社会の底に沈んでいるような男性たちですね。
【斎藤】社会的弱者というとどちらかといえば女性に焦点が当たっていたわけですが、ようやく彼らに対してもそのような認識が進んで、「何とかしてくれ」と声を上げるようにもなったんですね。
ただ、彼らは「俺たちにも女をあてがえ」といった発言をついしてしまうので、フェミニズムと食い合わせが悪かったりするのです。
【佐藤】週刊誌の『SPA! 』の特集になりそうな。(笑)
2.■「弱者男性の安楽死を合法化せよ」
【斎藤】まさに、世代的にはあれを愛読しているような人たちです。
で、そんな彼らも、実は優生思想を自ら振りまいている部分があるんですよ。
自分が疎外されたと感じた時に、彼らが必ずと言っていいほど口にするのが、「俺なんか生きていてもしようがない」というひと言なのです。
なぜなら、金も稼げない、生産性もない、何の役にも立っていないのだから……。
しかし、そうやって並べていくロジックの全てが、「役に立たない人間は生きているな」という優生思想に、見事に収斂(しゅうれん)されてしまう。
【佐藤】往々にして、そうやって自分に向ける刃は、他人にも向くことになります。
【斎藤】まさにその通りで、彼らは他人の生も批判します。
ですから、かなりの部分が、植松死刑囚のロジックを肯定してしまうところがある。
医師が難病患者の生命維持装置を止めるような行為に対しても肯定的で、「だから俺たちにも安楽死を認めろ」と主張したりもします。
結果的に、優生思想へのかなり強力な支持を表明することになっているわけです。
一方で、男女を問わず自分が「強者」だと認識している人たちはもとより、社会はそうした弱者男性に対して、決して温かくはありません。
「弱者男性の安楽死を合法化せよ」というようなどう考えても差別的な言説が、ネット上を飛び交ったりするわけですね。
そんなところからも、現代の優生思想が徐々に、しかし確実に蔓延しているのではないかという危惧を禁じ得ないのです。
■弱者の側にいるのに、弱者切り捨てに賛成してしまう
【佐藤】この前、非正規雇用労働者などの支援活動をしている作家の雨宮処凛(かりん)さんと対談したのですが、支援を受ける人たちに共通するのが、お話しのように自己肯定感が極めて低いことだとおっしゃっていました。
一方で、理想とするのは、実業家の前澤友作さんや堀江貴文さんだったりするんですね。
やっぱり、新自由主義的なものはウェルカム。なぜ自分を苦しめているものを是認してしまうのか、クエスチョンマークしかないと彼女は言っていました。
【斎藤】弱者男性の怨嗟(えんさ)の向かう先は、支配層ではなく、自分のちょっと上の中流ぐらいの層だというのも、よく言われることなんですね。
自分たちより弱者に対しては、もっと容赦なかったりする。
結果的に、弱者切り捨てに賛成してしまうという、自分の首を絞めるようなことになっているのです。
【佐藤】さらにこうした弱者男性たちは、福祉の話になると、「でも財源がないから」などと言うのだそうです。
自分自身は弱者なのに、まるで為政者側の立場にいるかのような発言をする。
そのことにも驚いていました。
3.■支援を受ける側が財源を考慮する必要はない
【斎藤】それは、本当におかしな話なのです。例えば、私は障害者年金の申請書を書く時に、この人に年金を出したら国の財政が破綻するとかしないとかいうことは、一切考えません。
自分の患者さんが楽になってくれれば、それでいいわけです。医療行政のことは、政治家が決めてくれ、と。
【佐藤】それは当然のことで、支援を受ける側が財源のことを考慮する必要など、ありません。
「苦しいからなんとかしろ」と異議だけ申し立てればいいのです。
それを全部受け止めて、どう整理していくのかが代議制民主主義であり、官僚制が存在する意味なのですから。
【斎藤】にもかかわらず、貧困層ほど忖度(そんたく)して、厳しい環境に自分を追い込んでいく、というのは、悲しい構図としか言いようがありません。
残念ながら、コロナ禍でさらに格差が拡大し、そうした状況に拍車がかかっているのは間違いないでしょう。
どこかで、そのおかしな回路を断ち切る必要があります。
【佐藤】知らずしらず、人の「生」を切り分ける優生思想がはびこる社会になっていた、などということにならないようにしなくてはいけません。
【斎藤】2021年8月、「新型コロナによる医療逼迫(ひっぱく)はない」と言っていた政府が、「重症化のリスクがない場合は自宅療養とする」という方針を打ち出しました。
入院できずに亡くなっている人が多数出ていると報じられていますが、「命の選択」が現実のものとなっているわけです。
こうした状況だからこそ、今佐藤さんのおっしゃったことを心に銘記すべきだと強く感じます。
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斎藤 環(さいとう・たまき)
筑波大学教授
1961年、岩手県生まれ。筑波大学医学研究科博士課程修了。爽風会佐々木病院等を経て、筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。
専門は思春期・青年期の精神病理学、「ひきこもり」の治療・支援ならびに啓蒙活動。
著書に『社会的ひきこもり』、『中高年ひきこもり』、『世界が土曜の夜の夢なら』(角川財団学芸賞)、『オープンダイアローグとは何か』、『「社会的うつ病」の治し方』、『心を病んだらいけないの?』(與那覇潤との共著・小林秀雄賞)など多数。
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佐藤 優(さとう・まさる)
作家・元外務省主任分析官
1960年、東京都生まれ。85年同志社大学大学院神学研究科修了。
2005年に発表した『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)で第59回毎日出版文化賞特別賞受賞。
『自壊する帝国』(新潮社)で新潮ドキュメント賞、大矢壮一ノンフィクション賞受賞。
『獄中記』(岩波書店)、『交渉術』(文藝春秋)など著書多数。
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東京の街に「中国資本の激安大盛り中華料理店」が増え続けている事情
2022/02/10
東京の街に「中国資本の激安大盛り中華料理店」が増え続けている事情
NEWSポストセブン
0.香港証券取引所に上場もする中国最大の火鍋チェーンと言われる「海底撈火鍋」が2021年11月、世界で展開する1600店舗のうち300店舗を閉鎖すると発表して大きな話題を集めた。
池袋や新宿など日本の店舗はまだ閉じていないが、積極的に出店させてきた巨大中国企業でも新型コロナウイルスの影響は免れないのかと話題になった。
巨大チェーン中華料理が苦境にある一方、コロナ禍と自粛に疲弊する日本の街には、なぜか中国資本による新たな形態の中華料理店が増え続けている。
俳人で著作家の日野百草氏が、急増する中華料理店をとりまく事情を探った。
1.「空きが出たらだいたい中国の人が入るね、コロナになってからは特に」
豊島区を中心に賃貸不動業を手掛ける営業マンに話を伺う。
池袋、大塚、巣鴨といった山手線沿線とあって近年はテナント賃貸が大半を占めるという。
あくまで彼のケースであり個々別の事情、業態により様々だが、2020年のコロナ禍に増えた中国資本とその関係者、相談も含めると日本人より多くなったと語る。
「条件や場所にもよるけど、中国人は言い値でテナントに入ってくれる。
とくに居抜きなら文句は言わないよ」
池袋もまた時間の問題だったか――筆者は彼に話を伺う前に池袋を歩いたが、コロナ禍で従来の日本人の店舗、とくに飲食店は疲弊しているのがわかる。
かつて池袋は新宿歌舞伎町の次に「夜の街」バッシングを被った。
なるほど中華料理店が増えている。それも、これまでのいわゆる中華街的な高級および中流クラスではなく中国本土と同じような大衆店、定食屋の類だ。
もう皆さんお馴染みかもしれない、それほどまでにコロナ禍に増え続けている。
5、6年前にも中華料理屋が増えたのだが、それともまた違う新たな「増殖」である。
「大陸の中国人だけど台湾料理と名乗ったりね。味つけが濃いので私は好みだけど」
筆者も今回のことも兼ね、池袋に限らず都内各所で新たに出店した中華料理屋に入ってみたが確かに味つけは濃い。
そして量も多い。店内はシンプルな定食のみかバイキングが主流、また短期間で店名をコロコロ変える場合もある。
それにしても画一的、これまでの各店独自色豊かな中華料理店とは一線を画する感じだ。激安大盛りは客を集められるかもしれないが客単価は低い。
人件費はもちろん昨今の物価高、仕入れも考えればそれなりの資金も必要だろうに、いったいどんな中国人が出店しているのか。
「バックの資本があるね。あとは手引きする会社がある。
このご時世、言い値で入ってくれるからありがたいけど、経営者自体が中国人の間でコロコロ変わったりしてる。
それ以上はわからないね、契約する人のお金がどこから出てるか、なんてこっちに関係ないし」
2.愛国心が強い「変な中国人」
先に触れた通り2020年、筆者は最初の緊急事態宣言下の新宿歌舞伎町で廃業店舗が中国人経営者の店になる経過を取材している。
その時も「言い値で、面倒なことを言わない」とテナント仲介会社は語っていた。
なにしろ当時は補償も心もとなく(いわゆる協力金第1弾)緊急事態宣言による撤退や廃業で疲弊していた時期、もう忘れた人もいるだろうが、小池百合子東京都知事まで「夜の街」バッシングを煽るような言動で物議を醸していた。
経験のない疫禍とはいえ都の初動は最悪だった。これをきっかけに外国人、とくに中国資本に変わった店もある。
旧コマ周辺の一等地すら派手な中国系の店が増えた。
「まあ池袋に限らず都内あちこち増え続けてますね。とくに池袋は中華街計画もあったので中国人には馴染みやすいんでしょう」
もう10年以上も前の話だが、インバウンド需要を目的に池袋では「中華街」を作ろうという話が持ち上がり、当初の計画通りの規模とはいかなかったが「池袋リトルチャイナ」と認知されるようになった。
なので今さら感もあり筆者は池袋に触れて来なかったのだが、コロナ禍に雨後の筍のように増殖する中華系資本の店舗はその10年以上前のそれともまた違う。まるで何かの指示があるかのように一斉に、突如といった感がある。
次に池袋ではないが都内で長く中華雑貨店を営む在日中国人店主の話、文章化するにあたり一部の日本語をこちらで補っている。
「わからない。私たちが来た当時とは違う人たちです。若い人が多いけど家族で雇われて日本で店を開くと聞いてます。交流もありません」
日本の在留中国人は2020年末の時点で77万8112人(出入国在留管理庁)と、いまや福井県や高知県の人口より多い。
同胞とはいえすべてと交流があるわけでもないし、あくまで彼の周りの話でしかないが別の都下の中華料理店の華人(日本国籍をとった中国人)も「よくわからない中国人が増えた」と笑いながら話していた。
コロナ禍に帰国、あるいは他国への移住も含め、在留中国人そのものは約4万人減ったにも関わらずだ。
「中国のほうが景気もいいし仕事も多い。コロナも気にせず暮らせるからと帰った人は多いです」
確かに、日本にいる中国人もすっかり様子が変わったように思う。
1990年代までは貧しい出稼ぎ中国人ばかりで密航者も多かった。
いわゆる「蛇頭」が暴れていたころだろうか。2000年代に入るとIT大国として徐々に力をつけ、いまやアメリカと太平洋どころか世界の覇権を争う超大国となった。
主要な太平洋航路は「アメリカと日本」から「アメリカと中国」に変わった。
これまで日本で稼いだ中国人はすでに帰国した人もいる。
筆者の知る中国人も仕送りの必要がなくなった、あるいはお金を貯めたと帰った。
個人的な感想で構わないので、それらと入れ替わりで増えている新たな在留中国人は何が違うのか教えて欲しい。
3.「故郷は好きですが中国共産党は好ましく思っていません。もちろん普段は口にしません。
日本に渡るしか無かった昔の世代はそうでしょう。天安門事件もありました。
それにやっぱり貧しかった。でも日本で商売をしようと最近来るような若い中国人や家族は中国共産党を誇りに思うというか、愛国心が強いように思います。
私からすると、変な中国人なんです」
中国人のすべてではないが、基本的に中国人は国を信用しない。
徹底した個人主義であり、中国人は中国人をもっと信用しない。
ただし利害の一致する相手、もしくはお金をくれる人のためには全力で尽くす。
案外とアメリカと貿易でうまくやっているのはお互い似た者同士な部分もあるのだろうが、現代の覇権的なグローバリズム経済にはシンプルに適っている。
それにしても「中国人に愛国心」とは。
「若い世代は中国が途上国だった時代を知りません。
仕方ないです。古くからの在日同胞も面白いね、と言っています」
彼も大陸を愛しても中共の支配する国そのものは愛していない。
反体制とはいかないまでも、いまの50代後半の在留中国人の中には激動の時代に青春を送り、日本に渡らざるをえなかった人がいる。
「いまどきなのでしょう。幹部の子でもないしコネもないのに中国共産党を心から支持する人たちです。
(コロナ前から)語学学校にいっぱいいるでしょう」
その新たな在留中国人、中国資本や協力する日本のブローカーの噂は耳にするが、筆者の知る限りいまだに貧しいままの中国東北部や四川の農村部、漢民族以外の中国籍の人々が来ている。
もしかして国策で取り組んでいるのではないか。
「それはわかりません。でも日本人が『そんなことまで』という分野まで細かく取り組んできたのが中国共産党です。
ありえないとは言えないです。党はとても怖い存在です。一般人でも容赦なく捕まえます」
もうかなわないよね、お金もってるし
貿易戦争に連戦連勝、世界の穀物や半導体を金の力で買い占める超大国は貪欲で容赦がない。
日本の種子や水どころか牛の精子まで手に入れた。海外で当たり前のように見かける和食店の多くも中国資本で、いまや日本人を雇って大々的に展開している。
冒頭の不動産営業マンの談。
「これは前からだけど潰れたコンビニとか使う場合もあるね。居抜きじゃないけど広いし他に使いようもないって物件も多いからさ。
都心じゃ少ないけど都下や関東あたりには多いでしょう」
確かに筆者の住む多摩も元コンビニの中華料理店は点在する。
どこも極めて庶民的で安い。この件でいくつかの店舗にあたってみたが、全員口が堅いのか無視するかやんわり拒否されてしまった。
これまで中国人のお店の人はおしゃべりで、どこから来たとか身の上話含め聞いてもいないことまで話す人が多い印象がある。
言い方は難しいがこれまでと違う印象、いずれも話したがらない。
日本人との接客以外の接触を避けているようにも思える。
「(中国資本の)オーナーに雇われてるだけだろうね。オーナーは本国にいるかもしれない。
でも中華料理屋が目立つけど知らないだけで、最近の出店テナントは中国資本多いよ」
4.日本の店でも中国資本というのは最近の傾向、人気の韓国系コスメショップも韓国人でなく中国資本だったりする。
豊島区の飲食店主に聞くと、このような感想もあった。
「どうやって利益出してんだろって思うくらい安いんだ。どれも500円とか、凄いとこはその金額でバイキングの食べ放題だよ」
日本国内でいったいどうやって稼いでいるのか、別に稼ぎがあるのか、先入観抜きにどこか変なのだ。
先の古くからの在日中国人が不思議がるのも無理はない。
「コロナでどんどん増えてるね。都心は協力金もらったってペイできないとこばかりだから、日本人には厳しいよ」
それにしても、まるで何かの号令があったかのように短期間で増えたように思う。
他国でも中国資本のこうした激安飲食店は多いのだが、コロナ禍の自粛と人命重視に疲弊し続ける日本をよそに、中国はさらに世界を席巻するべく攻勢をかけ続けた。
おかげで貿易では買い勝ち、アメリカと肩を並べるどころか凌ぐ国力で太平洋の支配を確立しようとしている。
謎の中国料理店の増殖という小さな話に思うかもしれないが、小さな事すら全力なのが中国という大国であることはこれまでの事案の数々が証明している。
「こんなことまで国がするのか」というのが中国だ。
一連のカジノなどの統合型リゾートに関する事件でもその「きめ細やかな」手口とそれに籠絡される日本側の実体があぶり出されたことは記憶に新しい。
「でも貸さないわけにもいかないしね、土地だってそうだけど、欲しい人は金さえ出せば誰でも借りられるし買えるのが日本だからさ。
コロナでテナント、厳しいからね」
中国人は固定資産税を払いたくないので日本の土地を永続的に持つなんて不合理なことはしたくない。
その代わり中国国内のインターネットで日本の土地を短期間に売買している。
都心の異常な値上がりは中国国内における日本の土地売買にも起因するのだが、日本に行ったこともない、現地を見てもいない中国人が投機目的で日本の土地をゲームよろしく売買している。
中国の名門大学の学生や若手IT経営者などはそれこそゲーム感覚で日本の土地を売り買いしている。
「日本人は北京や上海の土地でそれできないからね」
条件や面積にもよるができる国のほうが少ない。許しているのは日本政府だ。
日本人は中国の土地は買えない。借りるのすら規制が厳しく面倒だ。不条理だが中国のほうが世界的には当たり前の対応である。
国際常識からすれば日本のほうが「間抜け」呼ばわりである。
「政府が許してるんだから仕方ない。もうかなわないよね、お金もってるし。
日本もコロナ気にせず経済まわしてりゃね」
人命の問題なので致し方ないとはいえ一理ある。もちろん本稿は中国や在留中国人の方を過度に煽るためのものではない。
ただ人権意識が高い国のほうが損、という昨今、それにつけこまれることも事実である。
目に見えて新たな中国コミュニティが形成され、これまでと違う資本や意図も含めた正体不明の影が見え隠れする。
もはや世界の超大国である中国、3兆円以上のODAを止めた2018年の時と同様に、日本の安全保障という点でもこれまでのつきあい方を考え直す機会が訪れている。
ちょうど2022年で日中国交正常化50周年、対等な大国として守るべきものは守り、日本も毅然と対峙することこそ共生に繋がる。
そのほうが日本で商売をしたい「だけ」の中国人にとっても安心のはずだ。
中国は日本の土地どころかあらゆるものを金で買える、借りられるのに、日本は中国の土地を買えない、借りるにも規制まみれというのは不平等条約のようなものだと思う。
2021年、ようやく外資の土地取引規制法が成立したが極めて特殊な場所だけに限定したザル法である。
共生とは対等であるからこそ成り立つと考える。ゆずること、おもねることを共生とは言わない。
コロナ禍に疲弊する日本の小売りに替わって増殖する新たな中国資本の店舗、中華料理店はその一例だが、さらに加速するであろうその勢い、注視していく必要があるように思う。
【プロフィール】
日野百草(ひの・ひゃくそう)(本名 上崎 洋一 )ジャーナリスト、著述家、俳人。
1972年千葉県野田市生まれ。日本ペンクラブ会員。出版社勤務を経てフリーランス。
社会問題やと生命の倫理の他、日本の「食の安全保障」などロジスティクスに関するルポルタージュも手掛ける。


